子供の教育方針として「スパルタ教育」という言葉を聞いたことがあると思います。
スパルタ教育では教育現場・家庭内で行われ、昭和時代の更生施設では厳しい訓練に逃げ出そうとして、行方不明になることや亡くなるといった事件がありました。
しかし厳しさの中にも愛情があり、一緒に成長し合える指導者だった場合飛躍して成長でき短期間で能力があがる効果もあります。
そこで今回は、もしかしたら子供へ厳しくし過ぎていると気になる親御さんや指導者の人に読んで頂きたい「スパルタ教育」について解説します。
間違ったやり方のままでは手遅れになる可能性があります。
いい叱り方をする方法なども解説していますので、最後まで読んで下さいね。
目次
スパルタ教育の意味とは
古代ギリシアの都市国家「スパルタ」で行われた非常に厳格な人材教育から名付けられた教育法です。
日本の義務教育ではあまり使われていませんが、芸能関連・自衛隊訓練・その他特殊な訓練でスパルタ教育が用いられることもあります。
スパルタ教育の概念は、「厳しい教育を耐え抜くことで不屈の精神が育つ」ことが目的です。
上の立場の人が下の立場の人を厳しく教育することをスパルタ教育といいます。親も子に対して厳しく育てていると「スパルタ的な育て方をしている」と、言われるでしょう。
スパルタ教育の特徴
スパルタ教育とは極めて厳格な指導をすることをいいます。現在では「鬼指導」とも呼ばれます。
スパルタとパワハラは似ているようで違います。
スパルタ教育の目的は厳しい環境に耐えられる精神力育成や、非社会的な人を更生させることなどが目的です。
しかし、指導者側も熱が入りすぎて下の立場の人の心が傷つくことが多いのが現状でしょう。
特徴を分かりやすくいえば、動物の調教に似ています。ルールを守らない、うまくできない者へどういった指導がされるのか詳しく紹介します。
体罰
昭和時代の学校では教師が生徒に体罰を与えることは日常茶飯事でした。
例えば、授業中私語をする児童にはものさしで叩かれることや水の入ったバケツを持って廊下に立たせることがありました。
また、学校よりも進学塾でも体罰が多く竹刀を持って授業をしていたことや、成績が上がらない生徒には過度な課題を出しできないとお尻を竹刀で叩くスパルタ指導がありました。
殺伐とした雰囲気
現在こそ熱中症対策として水分補給は大事と言われていますが、スパルタ式の部活動は水を飲んではいけないルールがあったのです。
水を飲んではいけないルールはなくなったものの、強豪校ほどスパルタ教育で行われているところもあります。
バレーボールの指導ではボールを落としたら体罰があり、練習時間も深夜になることもあり殺伐とした雰囲気でした。
2度目の失敗が許されない
最初は丁寧に教えますが、指導したことが守られないと激しく叱責します。
一度の失敗で、「さっき言っただろう」「さっき教えただろう」と一度聞いたことをミスすると、容赦せず怒鳴ります。周囲にいる人も嫌な気分になります。
社会に出ると研修時に見られる光景で、厳しい研修に耐えられる社員を篩(ふるい)にかけて見極めるためといわれています。
また、看護学校がスパルタなのは命を預かる現場でミスは許されません。当然、一度のミスも許されないため気を引き締めて学ぶためです。
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見せしめ
暴力を大勢の前で行い見せしめにします。
近年のスパルタ教育といえば、家庭や学校で素行が悪い子供を送り込む「学校」でも行われるようです。
中国の学校では、禁止されている音楽プレイヤー・ゲーム機を持ち込んだルール違反の生徒には「こん棒の刑」が待っている。
わざわざ、全校生徒の前で背中や太ももを殴り抵抗すれば他の生徒に手足を抑えられ体罰は続くのです。
行き過ぎた詰め込み教育
スパルタ教育の特徴は1日数時間ぶっ通しで練習をするので、1日の練習時間・学習時間に大半の時間をつぎ込みます。生徒は途中で疲れて休みたいと思っても休めません。
早朝から起こされ練習や勉強をさせ、夜は夕飯・入浴以外はまた練習・勉強をさせます。
ミスは許されず、間違えた場合長い時間叱責をします。
スパルタ教育の効果
厳しいスパルタ教育に耐え、成績アップした人にはどのような効果があるのでしょう。
あなたも想像するように、強靭な精神力・不屈の闘志が芽生え簡単には逃げだそうとしない効果があるようです。
今は大分緩くなりましたが宝塚音楽学校は入学することも難しく、また学校生活では「清く・正しく・美しく」をモットーに少女たちはスパルタ教育を受けていました。
宝塚出身の女優達は、引退しても芸能界で活躍されている人も多いですね。学生時代から厳しい指導の元懸命に励んだ成果は立ち振る舞いでも感じることができます。
ここでは、スパルタ教育の効果について解説します。
場がまとまりやすくなる
子供のころに指導者の中にスパルタ教育を行う人がいると、組織の中では気が引き締まりまとまりやすくなります。怖い指導者への緊張感の中で集中力がつきます。
そうすると、我の強い子供になりにくく輪を乱さないので集団行動がしやすい子供になれます。
芸能活動を目的とした学校では、振付師が怖いことで有名です。
組織全体がスパルタ教育するのではなく、1人厳しい講師がいることで緊張感をもってレッスンを受けることは気が引き締まり全体をまとめる役割があるのです。
厳しい人に対して免疫がつく
厳しい親に育てられた子供は、精神的に強くなれるでしょう。
家で厳しく躾をされているので、学校で少々嫌なことがあってもへこたれません。中学、高校と進学していくうちにきつい友人や教師に出会っても心が強いので上手にスルーできます。
精神的に強いのでいじめの対象になりにくく、時にからかう相手に立ち向かって行きます。
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本番に強くなれる
褒めて伸びる人もいれば、厳しい指導で「こんちくしょう」と気合いの入る人がいます。
元々の性格が活発で勝気な人にスパルタ指導をすると「ミスして叱られてたまるか」と思うため、ミスしないよう自分自身を落ち着かせます。
そのため一発勝負の本番に強く土壇場で逆転できる人になれます。
謙虚になれる
強い者のいいなりになるので、扱いやすい人になりやすいでしょう。
自己主張をしないので性格的にも謙虚になるので「俺が」「私は」と歯向かってくることがなくなります。
ミスしても講師の教え方が悪いと考えず、自分が悪いと考えるようになります。一発で上手くいっても天狗にならず、継続できるよう気をつけて行動します。社会に出ると文句を言わず黙々と定年まで働く人になるでしょう。
弱肉強食の中生き残りやすい
厳しい指導に残れるということは、脱落せず最後までやり遂げる力が身につくということです。
練習も果てしなく多い課題も、最後まで走り続けられたことは心が本当に強くないとできません。弱い人はとっくに脱落し心に傷がついただけになるでしょう。
スパルタ教育を最後まで辞めずにやり遂げられた人は、今後の人生でも弱肉強食の中で生き残りやすくなれます。
スパルタ教育のメリットとデメリット
スパルタ教育を受けると全く能力がない人もある程度能力が身につくので、身体能力の向上が早い幼稚園児くらいは身につくスピードも早く他の子供とは大きく差が出るようです。
しかし、ある程度自我が芽生えた思春期以降の人には受け入れにくくデメリットが出やすいのです。
ここでは「スパルタ教育」のメリット・デメリットについて解説します。
メリット
短期間でマスターしやすい
スパルタ教育は緊張感の中指導を受けます。なので集中して覚えなくてはならず、能力取得まで短期間でマスターできるようになります。
自分の好きな時間にのらりくらり短時間で練習する人は上達するまで時間がかかるのです。
スパルタ教育の幼稚園では、園児のほぼ全員がバク転をできるようになります。他の運動でもほとんどの子供はマスターし卒園します。
社会性が身につく
スパルタ教育のルールは絶対です。先ほど紹介したようにルールを守らないと大勢の前で罰則を受け心の中では「あんな風になりたくない」と思うようになります。
生徒はきちんとルールを守ろうと必死になることで社会性が身についていくのです。
集団行動で輪を乱さず行動もできるようになります。
リーダー的存在になれる
先ほどの効果の回でも紹介したように、打たれ強く強靭な精神が宿るところです。精神的に強いのでピンチが起きても克服しようと立ち向かいます。結果、リーダー的存在になることもあるでしょう。
厳しい世界を知っている分、まとまりにくい組織に活を入れまとめていける人になれるでしょう。
デメリット
かえって失敗しやすくなる
普段叱られ慣れていない人が急にスパルタ教育を受けた場合緊張して失敗しやすくなります。
ミスすると激しく叱責されると心が折れながら作業をしています。
心が繊細なので、注意されるとダメなこと・いけないことをしたと思い込んでしまうため次第にモチベーションが下がってしまいます。
モチベーションが下がったまま、また作業をするので最初よりも酷くなってしまい自己肯定感が低くなっていきます。
自主性の欠落
スパルタ教育は上の人が独自の価値観やルールで指導をします。
下の人は、その指導に従うしかなく決まったレールの上をただ走る生き方をすることになります。
スパルタ指導が悪影響となり、自分で考えて自主的に動く力が身につきにくく大人になるに従い、生きにくい社会となる可能性があります。
社会から問題視される
厳しい指導に耐えられない人は、脱落していくので生徒が次々辞めてしまいます。
生徒が辞めればスパルタ教育が行き過ぎた結果、パワハラで訴えられてしまうことや厳しい指導が明るみになり学校としての指導が問題視されます。
指導者側も一人前に育てようと厳しく指導をして熱が入り過ぎたのでしょう。後悔しても後の祭りです。
スパルタ教育のやり方
愛情のあるスパルタ教育とは「飴と鞭」を上手に使い分けられる指導ではないでしょうか。
ただ厳しいだけでは向上心も失い、反抗心が生まれ「人への指導」とはいえません。
ここでは、「飴と鞭」を上手に使い分ける指導者の指導法について紹介します。
短時間で叱り、なぜ叱られたのか確認させる
同じことを何度も繰り返しいつも同じことで注意される子供で悩んでいませんか?
この場合は、子供がなぜ叱られているのか理由を知らないからです。
例えば、明日の支度をせずに朝になってバタバタすることを叱った場合どこが悪かったか聞いたところ「お母さんを怒らせてしまった」と思わないようにすることが大切です。
相手を信じる
高いハードルを与えれば失敗することも増えるでしょう。
失敗が増えると子供は「自分は価値のない人間なんだ」と思うようになります。しかし、こう思ってしまうのはよくありませんね。
ここで大事なのは、失敗しても「あなたなら大丈夫。やればできるから。」「うまくいくと信じているよ」と、子供のことを信じることが大事です。
相手が子供でなくても、青年期以降の大人でも信じてもらえることは報われます。
個人的感情で怒らない
叱ることと怒ることは違います。
怒るというのは自己中心的な感情をぶつけることで、叱るは相手のことを思いアドバイスをして気がつかせることや成長させるために叱責をすることをいいます。
叱るとでは、受け取るほうは心に受けるダメージが違います。そのためには伝え方が大事です。
人格否定をしない
やってしまったことと人格は別物です。
例えば「そんなことをやってはいけません」はOKですが、「そういうことをする〇〇ちゃんはみっともない子ね」というと人格まで否定された気持ちになります。
注意するときは、行動のみ注意をします。短くシンプルに要点を分かりやすく伝えることが大切です。
感情的に叱ったら親から「ごめんなさい」と言う
つい感情的にきつく叱ってしまうことは親となれば誰にでもあります。親も人間ですから仕方ないことです。
もし感情がセーブできずいいすぎてしまったら素直に謝りましょう。
親が子供に謝るなんて、親世代の子供時代では考えられないことですよね。しかし、ここで言い過ぎたことを親が子供に謝るのはとても大事なことです。
子供の心が報われることと、子供も誰かを傷つけたときに謝れる子供になります。
スパルタ教育の末路
スパルタ教育に耐えるには、指導者側のエゴがあってはなりません。そして、親子関係では子供を愛するが故に、熱くなりやすく常に鞭を打ち続けてしまいます。
愛するが故の結果が、子供の心を傷つけ挫折するとその反動は大きく手のつけどころがなくなるケースも多々あります。
ここでは、スパルタ教育によって子供の人生が大きく別れてしまったパターンを紹介します。
自暴自棄になる娘
子供の頃から習い事が多くスパルタ教育で育った子供が思春期になり中学受験に挫折するとたちまち転落した女性の例がありました。
非行に走り、家に帰らず万引き・ドラッグにまで手をだした彼女は「たった一言、父と母に頑張ったね」っていって欲しかったそうです。
自暴自棄になると、「認めてもらえないなら何しても同じ」と考えるようになり非常に危険です。
怨念しか生まない
生徒に舐められないよう、強面のいで立ちの塾講師は優秀な塾生を排出させていました。
指導方法は英文丸暗記のスパルタ式指導でした。
卒業した塾生に上達して良かったですねと声をかけたところ「私たちが頑張ってこられたのは講師への恨み」と言いました。
講師はショックを受けましたが、厳しいだけのスパルタでは憎しみが残りやすいのです。
不登校になりやすい
親が教育熱心で小学校まではいい成績だった子供が中学に上がっていくうち段々ついていけなくなり挫折するとプツンと人間が変わったように変貌します。
勉強ができたことで親に褒められなくなった・期待に答えられない自分はだめな人間と思うようになり、ますます勉強をしなくなります。
学年順位は下がる一方なので、学校へ行くのが苦痛になります。不登校になり、学校にも行けない自分が情けなく落ち込みます。
心のバランスを崩し、部屋で暴れるように。親は困り果ててしまいます。
脳にダメージを負う
スパルタ教育が行き過ぎると、「教育虐待」と進展する可能性があります。
虐待で逮捕される親は、虐待の自覚がなく「しつけのため・子供のため」にやったといいます。
過度のしつけはむしろ逆効果で、最悪な場合子供の脳に悪影響を与え精神障害を併発することもあります。
成長しても、暴言、暴力を受けた出来事のフラッシュバックに苦しんでしまいます。
才能を開花した人もいる
スパルタ教育の末路として心の傷を負い挫折すると最悪な結果になります。しかし、その人に合ったスパルタ教育を受け続けた結果大物になることもあります。
ピアニストの清塚信也さんの母親は毎朝5時に子供の清塚さんを起こし、1日8時間から12時間ピアノの練習をさせていました。
厳しいお母さんでも、清塚さんがピアノの演奏を本当に好きなこと、才能を信じて厳しくしていたのでしょう。
清塚さんのようにスパルタ教育を受け成功できた人もいます。
ゆとり教育の良かったところ
「ゆとり教育」が始まるまで、学校の先生は厳しく体罰は当たり前でした。
今ならかなり問題になることも日常茶飯事で、厳しい指導に反発する生徒が学校で暴れることは各地で報道されていた時代です。
今では、校内暴力という言葉は完全に死語になり男子生徒もずいぶん大人しくなった印象です。
人と人も角がぶつかり合うと壊れてしまいます。
暴れる生徒がいたのも、行き過ぎた教師の指導が原因だったことは「ゆとり教育」が教えてくれたような気がします。